まちには匂いがある。
人々の匂い
海からの匂い
山の木々の発する匂い
それらの匂いからどんなまちなのか想像ができる。
でも、不思議だ……。
このまちからは匂いがしない。
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「くじらさん、くじらさん……
今日もいいお天気ですね」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ……
どうして誰も疑問に思わないんだ!?」
「え? だって、くじらさんがお空に
浮かんでるのは当たり前じゃないですか」
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くじらが浮かんでいる。
まるで、街の人々を見守るように……。
そして、その事に疑問を持っているのは……どうやら僕だけのようだ。
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「…………」
「君はどうしてここにいるんだ?」
「わたしは……」
「え?」
「あなたがここに来てくれますようにって、
お願いしていたの……」
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女の子のまっすぐな視線は僕の目を見ているようで
それでいて、まったく別の何かを見ているようだった。
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「何かを無くしたんだったら、
これから見つければいいの。
このまちだったらきっと見つかるから」
「えっ? ナニそれ」
「ほら! 早くしないと遅刻するよ?」
「あ、待てよ! こら」
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そのまちでの数々の出会いが、錆び付いた僕の心を揺り動かす。
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「ねぇ、雪って見たことある?」
「テレビでなら……」
「白くてふわふわしたものが、
空から舞い落ちてくるのよ?
なんだか素敵じゃない?」
「ふぅん……どうだろ?」
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群青色の空
白い雲
どこにもない何かを求め
僕は旅を続ける。
世界は――
あまりにも広く
あまりにも切ないから
僕はひとひらの雪を大切にする。
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